無題5
「木村くん、なんで私の名前知ってるの?」
「名簿でみたんだ」
「へえ」
また、会話が続かない。と思った。しかたがないので優奈は、自分の作業をすすめることにした。いつの間にか、集中していて時間がたつのを忘れていた。
「桜田さん。」
「え」
熱中しすぎて、時間のことをすっかり忘れていた頃だった。時計を見ると、既に七時半だ。
美術部の活動時間は、届出をしないかぎり七時に終了なのでもう三十分もすぎていることになる。
「あ。。。ごめん。」
あわてて片付けようとしたら、
「大丈夫だよ。あせらないでいいから。」
と、言われた。気がついたら、他の部員は全員帰っているようだった。
時計の針が、秒針を刻む音がカチカチときこえる。時計の針が動く音って、どうしてこんなに寂しい気持ちにさせるのだろう。
「ごめんね。」
「全然平気。先生のところに報告しにいこうか。」
結局職員室に、鍵を返しにいった時、もう少し早くくるようにと注意を受けてしまった。
「ごめん。なんか今日、謝ってばっかりだね。」
「そう?あんまり気にしてないから、そんなに謝らなくていいよ。」
外に出ると、四月なのに寒い。曇りという天気が原因かもしれない。今にも雨が降りそうで、遠くで雷がゴロゴロ鳴っている音がきこえた。
「寒いね」
祐樹は言う。
「そうだね。マフラーとか、手袋とか欲しいかも。」
「あー。欲しいかも。」
優奈は、次の言葉が思いつかず会話が終わってしまう。情けないな、とも思った。
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