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2008年11月22日 (土)

無題1

学校が夏休みで、授業がない日の朝に電話はなった。まだ始まったばかりだ。

壁にかけてある時計を見ると、針は八時十二分をさしている。

桜田優奈は、直感でその電話がいやな知らせだと悟ったが、取らないわけにはいかないので渋々電話の受話器を上げた。

ガチャリ、と音がやけに部屋に響く。

「もしもし。」

いつもより、数段低い声が出る。

「もしもし、桜田さんのお宅ですか。」

電話の向こう側からは女の人の声がする。年齢は分からないが、だいたい三十代から四十代ぐらいのひとだと目星をつける。落ち着いた喋り方だ。

「そうですが。どちらさまですか。」

どうせ、クラスメイトのお母さんかセールス、または父母の仕事仲間だろう。

あいにく父母は既に、仕事に出かけてしまっている。

「木村というものですが、優奈さんはいますか。」

その質問に、優奈は虚をつかれた。自分の名前がでるとは思っていなかったからだ。

「私、ですが。」

戸惑いつつも、名乗りでる。頭の中では、木村という知り合いはいたかな。と頭を回転させる。だがそんな知り合いはいるはずがない。そこらへんの女子中学生に、年配の女性の知り合いはいない。来年、受験だし家庭教師の勧誘、というのも考えられる。

「私、木村祐樹の母です。いつも息子がお世話になってました。」

祐樹、というのは優奈の同級生だった。一学期中は二回席替えをしたのだが、その二回とも隣同士になった。

「ああ。木村君の。どうかされたんですか?」

夏休みだし家出でもして、探しているかもしれない。という考えが頭をよぎった。

だが、見当違いだ。優奈と祐樹は別に、学校の中ではないが学校外の付き合いはほとんどない。

電話の向こうで、唾をのむ音が聞こえた。それは、なにかを覚悟しているようにもきこえる。

「あのね。」

「はい。」

「祐樹が死んだの。交通事故でね。」

そういって、電話の向こう側の女性は、小さく泣き出した。優奈はどうしていいかわからなくってただただ、電話の前で呆然としていた。

ユウキガシンダノ。コウツウジコデネ。

先ほどの声が、頭の中でこだましていた。

シンダという意味がそのときは、よく知っている言葉なのに、その意味に結びつかなかった。

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